2027年介護報酬改定(令和9年度改定)は、2026年12月に方向性がまとまり、2027年1月頃に答申、2027年4月に施行される見込みです。老健と通所は、算定率の低い加算の整理と、在宅生活を支える機能の評価が論点です。
介護報酬に関しては2026年6月に処遇改善を中心とした臨時改定(改定率+2.03%)が行われたばかりです。2027年4月には通常の改定が続きます。2年連続の改定になるため、「何が議論されているのか」「自分の事業所はどこを見られているのか」を今のうちに整理しておく必要があります。
この記事では、2026年10月時点で公開されている厚生労働省の資料から、改定の日程と論点、老健と通所への影響をまとめます。
2027年介護報酬改定はいつ決まるのか?
2026年12月の審議報告で改定項目が固まり、2027年1月頃に単位数が判明し、2027年4月に施行される見込みです。
社会保障審議会介護給付費分科会は、2026年4月から9月までに9回の審議と、関係団体との意見交換会を3回行いました。9月30日には「基本的な視点(案)」が示され、議論は各論から全体の方向づけに移っています。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年4月〜9月 | サービスごとの現状と論点を審議。関係団体から意見聴取 |
| 2026年9月30日 | 「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」を提示 |
| 2026年10月〜12月 | 具体的な方向性を審議 |
| 2026年12月 | 報酬・基準の基本的な考え方をとりまとめ(審議報告)。年末の予算編成で改定率が決定 |
| 2027年1月頃 | 改定案の諮問・答申。単位数が判明 |
| 2027年3月 | 告示・通知・Q&Aの公表 |
| 2027年4月 | 施行(予定) |
事業所にとって重要なのは、12月の審議報告で項目が分かり、1月に単位数が分かり、3月まで解釈が確定しないという順序です。対策は3段階に分けて進めることになります。
2027年介護報酬改定は、今、何が議論されているのか?
議論の中心は、処遇改善と物価対応で基本報酬を底上げする一方、算定率の低い加算を整理・簡素化することです。9月30日に示された基本的な視点は、次の5つです。
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| ① 物価・賃金上昇への対応と処遇改善 | 物価と賃金の上昇を報酬に反映し、他産業と遜色のない処遇改善を実現する |
| ② 人口減少・需要変化に応じた提供体制 | 中山間・人口減少地域の「特定地域サービス」の人員基準と報酬、中山間地域の加算の見直し |
| ③ 地域包括ケアシステムの深化 | 医療・介護連携、生活期のリハビリ、認知症、LIFEを使った科学的介護と成果の評価 |
| ④ 職場環境の改善と生産性の向上 | AIなどの介護テクノロジー、タスクシフト・シェアの推進 |
| ⑤ 制度の安定性・持続可能性の確保 | 評価の適正化・重点化、報酬体系の整理・簡素化 |
リハビリについては、視点③の中に「生活期における自立支援に向けたリハビリテーションを一層推進する」と明記されました。医療・介護連携と並べて書かれているため、退院後の受け皿としての通所・訪問リハビリと老健の機能が、引き続き評価の対象になります。
同じ資料では、令和7年度介護事業経営概況調査で赤字事業者の割合が全サービスで約4割に達していることも示されています。処遇改善と経営の安定が改定の最優先事項である一方、⑤の「適正化・重点化」「整理・簡素化」は、算定率の低い加算が見直される可能性を意味します。
制度面では、2026年6月に成立した社会福祉法等の改正で、特定地域サービスの創設、有料老人ホームの登録制、都道府県による生産性向上協議会の設置が決まりました。利用者負担では、介護保険部会が2025年12月の意見で2割負担の対象拡大の結論を先送りし、2027年度の第10期介護保険事業計画の開始までに判断するとしました。財政制度等審議会は2026年6月の建議で拡大を提案しています。
2027年介護報酬改定で老健はどこを見られているのか?
超強化型が3分の1を占めるようになった今、国は「上位類型を増やす」段階から「在宅復帰と在宅療養支援の中身を見る」段階に移っています。指標のうち差がつく項目(在宅復帰率、ベッド回転率)と、差がつかない項目(医療処置)の扱いが変わる可能性があります。
2026年7月9日の分科会(第260回)では、老健の現状が次のように示されました。
- 超強化型の割合は、2018年5月の7.8%から2025年11月の33.2%に増えました。基本型は51.1%から20.7%に減りました。
- 在宅復帰率の平均は、全体42.6%、超強化型57.3%、加算型32.4%、基本型18.9%です。
- 在宅復帰・在宅療養支援等指標の得点は、在宅復帰率とベッド回転率で類型間の差が大きく、喀痰吸引と経管栄養の実施割合では差が小さいという結果でした。
- 認知症短期集中リハビリテーション実施加算は、28.5%の施設が「算定が難しい」と回答しました。理由で最も多いのは「医師が必要な研修を終えていない」です。
2027年介護報酬改定で通所介護・通所リハはどう変わりそうか?
通所に関しては、通所介護・通所リハビリに共通して、算定率が9割近い加算は基本報酬への包括化、1割程度の加算は要件の見直しか廃止が論点です。通所リハビリは、要支援者の長期利用の扱いも論点です。
2026年6月15日の分科会(第258回)では、通所系の加算の算定率が示されました。
| 加算 | 通所介護の算定率 |
|---|---|
| 個別機能訓練加算Ⅰイ | 47.4% |
| 個別機能訓練加算Ⅰロ | 32.0% |
| 個別機能訓練加算Ⅱ | 35.9% |
| 入浴介助加算Ⅰ | 89.8% |
| 入浴介助加算Ⅱ | 12.2% |
通所介護は、厚生労働省が示した論点は、「中重度者や認知症高齢者の生活機能を維持し、在宅生活を続けるための質の高いサービス提供をどう進めるか」と「算定率が低い加算や高い加算のあり方」です。算定率が9割に近い加算は基本報酬への包括化、1割程度の加算は要件の見直しか廃止が、過去の改定でも行われてきました。
通所リハビリは、令和6年度の収支差率が2.0%で、全サービス平均の4.7%を下回っています。要支援者の約9割が24か月を過ぎても利用終了の予定がないことも示されました。要支援者の長期利用の扱いは、2024年度改定で12か月超の減算が6倍になったあとも、引き続き論点です。
2027年介護報酬改定でリハビリは何が論点になっているのか?
リハビリに関しては、「リハビリの量」ではなく「リハビリテーションマネジメントの実施状況」が評価の軸になっています。
通所リハビリの資料(第258回)では、算定率が低い加算として、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ3.0%、Ⅱ0.38%)、生活行為向上リハビリテーション実施加算(1.6%)、退院時共同指導加算などが名指しで挙げられました。算定が難しい理由は「対象者がいない」「研修を修了した医師や職員がいない」です。そのうえで論点は、「リハビリの実施内容とリハビリテーションマネジメントの実施状況を踏まえ、通所リハビリの提供体制をどう考えるか」とされています。
同じ資料では、リハビリテーションマネジメント加算を算定している事業所の82.8%が居宅訪問を実施しているのに対し、算定していない事業所では70.4%でした。2024年度改定では、大規模型の通所リハビリでも、リハビリテーションマネジメント加算の算定率が80%以上で、リハビリ専門職の配置が10対1以上なら通常規模型と同じ基本報酬になり、該当する通所リハビリは、「大幅増収」となりました。会議、居宅訪問、計画の見直しを回している事業所を基本報酬で評価する流れは、2027年も続くと考えられます。
老健では、在宅復帰・在宅療養支援等指標の項目⑥がリハビリ専門職の配置割合で、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれも配置して5以上なら最高点です。一方で、短期集中リハビリテーション実施加算Ⅰは6.8%の施設が「算定が難しい」と答え、理由の最多は「必要な人員配置が確保できない」でした。リハビリ専門職の配置が、類型と加算の両方に関わっています。弊社クライアントの老健(定員80床・強化型)では、リハビリ専門職を5名から7名に増員してリハビリ目的の入所者を増やした結果、2026年3月から8月までの6か月で稼働率が89%から96%に上がり、収入が月300万円増えました。
2027年介護報酬改定に向けて今から何を準備すべきか?
今からできる準備は、①自事業所の算定状況の一覧化、②12月の審議報告で自事業所に関係する項目の抽出、③1月の単位数で試算し3月のQ&Aで確定、の3つです。なぜQ&Aまで確認が必要なのかを、2024年度改定で支援先に起きたこと2つから説明します。
1つ目は通所リハビリです。利用開始から1年を超える要支援者の減算が、要支援1で20単位から120単位、要支援2で40単位から240単位へと6倍になりました。ただし、リハビリテーション会議の開催とLIFEへのデータ提出で減算を回避できる仕組みが同時に示されました。これは、非常に通所リハビリとしては「手間が増えた」部分だと思います。2027年の介護報酬改定ではさらにどのように変更されるのかは注目です。
2つ目は老健です。認知症短期集中リハビリテーション実施加算がⅠ(240単位)とⅡ(120単位)に分かれ、Ⅰの算定には居宅への訪問が要件になりました。リハビリ専門職の訪問時間が取れず、弊社クライアントの老健では、2024年1月に改定案が示された時点で、対象者10人が月12回実施する計算で、1か月あたり約14万円の減収を見込んでいましたが、3月のQ&Aで訪問者の職種は限定されないことが示され、支援相談員の訪問で算定を続けられました。
この2つに共通するのは、「改定項目を見ただけでは減収か増収か決まらない」「Q&Aまで確認して初めて対策が決まる」という点です。そのうえで、今から始められる準備は次の3つです。
- 自事業所の算定状況を一覧にします。 算定している加算、していない加算、その理由を書き出します。算定率が低い加算を取っている事業所は、要件変更の影響を受けやすいためです。リハビリに関しては、リハビリテーションマネジメント加算の算定率、リハビリ会議の開催状況、居宅訪問の実施率、医療機関からのリハビリ実施計画書の入手率を数字で押さえておきます。
- 12月の審議報告で、自事業所に関係する項目だけを抜き出します。 全項目を読む必要はありません。老健なら在宅復帰・在宅療養支援等指標とリハビリ関連加算、通所なら機能訓練・入浴・要支援者の扱いです。
- 1月の単位数で増減収を試算し、3月のQ&Aで確定させます。 試算は「対象利用者数×単位数×日数」で十分です。担当者と期限を決め、4月1日に算定できる状態にします。
2027年介護報酬改定は経営にどう影響するのか?
2027年介護報酬改定は、処遇改善と物価対応で基本報酬は上がる方向ですが、加算の整理と適正化が同時に進みます。「全体はプラス、自事業所はマイナス」という事業所が出る改定です。
老健は在宅復帰率とベッド回転率、通所は加算の算定状況と要支援者の利用期間が、改定後の収支を左右します。審議が進んだ段階で、この記事に項目を追記していきます。
よくある質問
- 2027年介護報酬改定はいつから施行されますか?
-
2027年4月の施行が見込まれています。2026年12月に審議報告、2027年1月頃に諮問・答申、3月に告示と通知が出る予定です。
- 2026年6月の臨時改定と何が違うのですか?
-
2026年6月の改定は、介護職員の処遇改善を目的とした臨時の改定で、改定率は+2.03%でした。2027年の改定は3年に一度の通常改定で、基本報酬や加算の要件全体が見直されます。
- 老健の在宅復帰・在宅療養支援等指標は変わりますか?
-
2026年10月時点では決まっていません。分科会の資料では、在宅復帰率とベッド回転率で類型間の差が大きく、医療処置の項目では差が小さいことが示されており、指標の構成が論点になっています。
- 通所介護の個別機能訓練加算はなくなりますか?
-
決まっていません。算定率はⅠイが47.4%、Ⅱが35.9%で、「算定率が低い加算や高い加算のあり方」が論点として示されています。要件の見直しの可能性はありますが、廃止の方向性は示されていません。
- 通所リハビリのリハビリテーションマネジメント加算はどう扱われますか?
-
リハビリテーションマネジメント加算を算定し、会議と居宅訪問を回している事業所を評価する方向です。分科会の資料では、リハビリテーションマネジメントの実施状況を踏まえて提供体制を考えることが論点とされ、2024年度改定でも大規模型の基本報酬の要件に算定率80%以上が入りました。会議と居宅訪問を回せる体制を整えておくことが準備になります。
出典
- 厚生労働省 第268回社会保障審議会介護給付費分科会(2026年9月30日)資料1「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」
- 厚生労働省 第260回社会保障審議会介護給付費分科会(2026年7月9日)資料2「介護老人保健施設」
- 厚生労働省 第258回社会保障審議会介護給付費分科会(2026年6月15日)資料(通所介護・通所リハビリテーション)
- 厚生労働省 第258回社会保障審議会介護給付費分科会(2026年6月15日)資料3「通所リハビリテーション」
- 厚生労働省 第268回社会保障審議会介護給付費分科会 資料ページ
- 厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(2025年12月25日)